弁護士費用 第3章 着手金および報酬金
第1節 民事事件
第12条(民事事件の着手金及び報酬金の算定基準)
本節の着手金及び報酬金については、本基準に特に定めのない限り、着手金は事件等の対象の経済的利益の額を、報酬金は委任事務処理により確保した経済的利益の額を、それぞれ基礎として算定します。
第13条(経済的利益-算定可能な場合)
前条の経済的利益の額は、本基準に特に定めのない限り、次のとおり算定します。
① 金銭債権は、債権総額(利息及び遅延損害金を含む。)
② 将来の債権は、債権総額から中間利息を控除した額
③ 縦続的給付債権は、債権総額の10分の7の額。ただし、期間不定のものは、7年分の額
④ 賃料増減額請求事件は、増減額分の7年分の額
⑤ 労働契約(雇用契約)上の地位確認請求事件は、7年分の給与の額
⑥ 所有権は、対象たる物の時価相当額
⑦ 占有権、地上権、永小作権、賃借権及び使用借権は、対象たる物の時価の2分の1の額。ただし、その権利の時価が対象たる物の時価の2分の1の額を超えるときは、その権利の時価相当額。
⑧ 建物についての所有権に関する事件は、建物の時価相当額に、その敷地の時価の3分の1の額を加算した額。建物についての占有権、賃借権及び使用借権に関する事件は、前号の額に、その敷地の時価の3分の1の額を加算した額
⑨ 地役権は、承役地の時価の2分の1の額
⑩ 担保権は、被担保債権額。ただし、担保物の時価が債権額に達しないときは、担保物の時価相当額
⑪ 不動産についての所有権、地上権、永小作権、地役権、賃借権及び担保権等の登記手続請求事件は、第6号、第7号、第9号及び前号に準じた額
⑫ 詐害行為取消請求事件は、取消請求債権額。ただし、取消される法律行為の目的の価額が債権額に達しないときは、法律行為の目的の価額
⑬ 共有物分割請求事件は、対象となる持分の時価の3分の1の額。ただし、分割の対象となる財産の範囲又は持分に争いのある部分については、争いの対象となる財産又は持分の額
⑭ 遺産分割請求事件は、対象となる相続分の時価相当額。ただし、分割の対象となる財産の範囲及び相続分について争いのない部分については、その相続分の時価相当額の3分の1の額
⑮ 遺留分減殺請求事件は、対象となる遺留分の時価相当額
⑯ 金銭債権についての民事執行事件は、請求債権額。ただし、執行対象物件の時価が債権額に達しないときは、第1号の規定にかかわらず、執行対象物件の時価相当額(担保権設定、仮差押等の負担があるときは、その負担を考慮した時価相当額)
第14条(経済的利益算定の特則)
(1) 前条で算定された経済的利益の額が、紛争の実態に比して明らかに大きいときは、弁護士は、経済的利益の額を、紛争の実態に相応するまで、減額するものとします。
(2) 前条で算定された経済的利益の額が、次の各号の一に該当するときは、弁護士は、経済的利益の額を、紛争の実態又は依頼者の受ける経済的利益の額に相応するまで、増額することができます。
① 請求の目的が解決すべき紛争の一部であるため、前条で算定された経済的利益の額が紛争の実態に比して明らかに小さいとき。
② 紛争の解決により依頼者の受ける実質的な利益が、前条で算定された経済的利益の額に比して明らかに大きいとき。
第15条(経済的利益-算定不能な場合)
(1) 第13条により経済的利益の額を算定することができないときは、原則としてその額を800万円とします。
(2) 弁護士は、依頼者と協議のうえ、前項の額を、事件等の難易、軽重、手数の繁簡及び依頼者の受ける利益等を考慮して、適正妥当な範囲内で増減額することができるものとします。
第16条(民事事件の着手金及び報酬金)
(1) 訴訟事件、非訟事件、労働審判事件、家事審判事件、行政審判等事件及び仲裁事件(弁護士会が主宰する「仲裁センター」等の紛争解決機関への申立事件を含む。)の着手金及び報酬金は、本基準に特に定めのない限り、経済的利益の額を基準として、それぞれ次表のとおり算定します。
経済的利益の額 | 着手金 | 報酬金 |
300万円以下の部分 | 8% | 16% |
300万円を超え3000万円以下の部分 | 5% | 10% |
3000万円を超え3億円以下の部分 | 3% | 6% |
3億円を超える部分 | 2% | 4% |
(2) 前項の着手金及び報酬金は、事件の内容により、30%の範囲内で増減額することができます。
(3) 民事事件につき同一弁護士が引き続き上訴事件を受任するときは、前2項にかかわらず、着手金を適正妥当な範囲内で減額することができます。
(4) 前3項の着手金は、10万円を最低額とします。
第17条(調停事件及び示談交渉事件)
(1) 調停事件及び示談交渉(裁判外の和解交渉をいう。以下同じ。)事件の着手金及び報酬金は、本基準に特に定めのない限り、それぞれ前条第1項及び第2項または第20条第1項及び第2項の各規定を準用します。ただし、それぞれの規定により算定された額の3分の2に減額することができます。
(2) 示談交渉事件から引き続き調停事件を受任するときの着手金は、本基準に特に定めのない限り、前条第1項及び第2項または第20条第1項及び第2項の各規定により算定された額の2分の1とします。
(3) 示談交渉事件または調停事件から引き続き訴訟その他の事件を受任するときの着手金は、本基準に特に定めのない限り、前条第1項及び第2項又は第20条第1項及び第2項の各規定により算定された額の2分の1とします。
(4) 前3項の着手金は、10万円(第20条の規定を準用するときは、5万円)を最低額とします。
第18条(契約締結交渉)
(1) 示談交渉事件を除く契約締結交渉の着手金及び報酬金は、経済的利益の額を基準として、次表のとおり算定します。
経済的利益の額 着手金 報酬金
経済的利益の額 | 着手金 | 報酬金 |
300万円以下の部分 | 2% | 4% |
300万円を超え3000万円以下の部分 | 1% | 2% |
3000万円を超え3億円以下の部分 | 0.5% | 1% |
3億円を超える部分 | 0.3% | 0.6% |
第19条(督促手続事件)
(1) 督促手続事件の着手金は、経済的利益の額を基準として、次表のとおり算定します。
経済的利益の額 | 着手金 |
300万円以下の部分 | 2% |
300万円を超え3000万円以下の部分 | 1% |
3000万円を超え3億円以下の部分 | 0.5% |
3億円を超える部分 | 0.3% |
(2) 前項の着手金は、事件の内容により、30%の範囲内で増減額することができます。
(3) 前2項の着手金は、5万円を最低額とします。
(4) 督促手続事件が訴訟に移行したときの着手金は、第16条または第20条の規定により算定された額と前3項の規定により算定された額との差額とします。
(5) 督促手続事件の報酬金は、第16条または第20条の規定により算定された額の2分の1とします。ただし、依頼者が金銭等の具体的な回収をしたときでなければ、これを請求することができません。
(6) 前項ただし書の目的を達するため、民事執行事件を受任するときは、弁護士は、第1項ないし前項の着手金または報酬金とは別に、民事執行事件の着手金として第16条の規定により算定された額の3分の1を、報酬金として同条の規定により算定された額の4分の1を、それぞれ受けることができます。
第20条(手形、小切手訴訟事件)
(1) 手形、小切手訴訟事件の着手金及び報酬金は、経済的利益の額を基準として、次表のとおり算定します。
経済的利益の額 | 着手金 | 報酬金 |
300万円以下の部分 | 4% | 8% |
300万円を超え3000万円以下の部分 | 2.5% | 5% |
3000万円を超え3億円以下の部分 | 1.5% | 3% |
3億円を超える部分 | 1% | 2% |
(2) 前項の着手金及び報酬金は、事件の内容により、30%の範囲内で増減額することができます。
(3) 前2項の着手金は、5万円を最低額とします。
(4) 手形、小切手訴訟事件が通常訴訟に移行したときの着手金は、第16条の規定により算定された額と前3項により算定された額との差額とし、その報酬金は、第16条の規定を準用します。
第21条(離婚事件)
(1) 離婚事件の着手金及び報酬金は、次表のとおりとします。ただし、同一弁護士が引き続き上訴事件を受任するときは、着手金を適正妥当な範囲内で減額することができます。
離婚事件の内容 | 着手金及び報酬金 |
離婚調停事件または離婚交渉事件 | 30万円以上50万円以下 |
離婚訴訟事件 | 40万円以上60万円以下 |
(2) 離婚交渉事件から引き続き離婚調停事件を受任するときの着手金は、前項の規定による離婚調停事件の着手金の額の2分の1とします。
(3) 離婚調停事件から引き続き離婚訴訟事件を受任するときの着手金は、第1項の規定よる離婚訴訟事件の着手金の額の2分の1とします。
(4) 前3項において、財産分与、慰謝料など財産給付を伴うときは、弁護士は、財産給付の実質的な経済的利益の額を基準として、第16条または第17条の規定により算定された着手金及び報酬金の額以下の適正妥当な額を加算して請求することができます。
(5) 前4項の規定にかかわらず、弁護士は、依頼者と協議のうえ、離婚事件の着手金及び報酬金の額を、依頼者の経済的資力、事案の複雑さ及び事件処理に要する手数の繁簡等を考慮し、適正妥当な範囲内で増減額することができます。
第22条(境界に関する事件)
(1) 境界確定訴訟、境界確定を含む所有権に関する訴訟その他境界に関する訴訟の着手金及び報酬金は、次のとおりとします。ただし、同一弁護士が引き続き上訴事件を受任するときは、着手金を適正妥当な範囲内で減額することができます。
着手金及び報酬金 | 40万円以上60万円以下 |
(2) 前項の着手金及び報酬金は、第16条の規定により算定された着手金及び報酬金の額が前項の額を上回るときは、同条の規定によります。
(3) 境界に関する調停事件及び示談交渉事件の着手金及び報酬金は、事件の内容により、第1項の規定による額または前項の規定により算定された額の、それぞれ3分の2に減額することができます。
(4) 境界に関する示談交渉事件から引き続き調停事件を受任するときの着手金は、第1項の規定による額または第2項の規定により算定された額のそれぞれ2分の1とします。
(5) 境界に関する調停事件または示談交渉事件から引き続き訴訟事件を受任するときの着手金は、第1項の規定による額または第2項の規定により算定された額の、それぞれ2分の1とします。
(6) 前5項の規定にかかわらず、弁護士は、依頼者と協議のうえ、境界に関する事件の着手金及び報酬金の額を、依頼者の経済的資力、事案の複雑さ及び事件処理に要する手数の繁簡等を考慮し、適正妥当な範囲内で増減額することができます。
第23条(借地非訟事件)
(1) 借地非訟事件の着手金は、借地権の額を基準として、次表のとおりとします。ただし、同一弁護士が引き続き上訴事件を受任するときは、着手金を適正妥当な範囲内で減額することができます。
借地権の額 | 着手金 |
5000万円以下の場合 | 30万円以上50万円以下 |
5000万円を超える場合 | 前段の額に5000万円を超える部分の0.5%を加算した額 |
(2) 借地非訟事件の報酬金は、次のとおりとします。ただし、弁護士は、依頼者と協議のうえ、報酬金の額を、事案の複雑さ及び事件処理に要する手数の繁簡等を考慮し、適正妥当な範囲内で増減額することができます。
① 申立人については、申立が認められときは借地権の額の2分の1を、相手方の介入権が認められたときは財産上の給付額の2分の1を、それぞれ経済的利益の額として、第16条の規定により算定された額
② 相手方については、その申立が却下されたときまたは介入権が認められたときは、借地権の額の2分の1を、賃料の増額又は財産上の給付が認められたときは、賃料増額分の7年分または財産上の給付額をそれぞれ経済的利益として、第16条の規定により算定された額
(3) 借地非訟に関する調停事件及び示談交渉事件の着手金及び報酬金は、事件の内容により、第1項の規定による額又は前項の規定により算定された額の、それぞれ3分の2に減額することができます。
(4) 借地非訟に関する示談交渉事件から引き続き調停事件を受任するときの着手金は、第1項の規定による額の2分の1とします。
(5) 借地非訟に関する調停事件または示談交渉事件から引き続き借地非訟事件を受任するときの着手金は、第1項の規定による額の2分の1とします。
第24条(保全命令申立事件等)
(1) 仮差押及び仮処分の各命令申立事件(以下「保全命令申立事件」という。)の着手金は、第16条の規定により算定された額の2分の1とします。ただし、審尋または口頭弁論を経ることが想定されるときは、同条の規定により算定された額の3分の2とします。
(2) 前項の事件が重大または複雑であるときは、第16条の規定により算定された額の4分の1の報酬金を受けることができます。ただし、審尋または口頭弁論を経たときは、同条の規定により算定された額の3分の1の報酬金を受けることができる。
(3) 第1項の手続のみにより本案の目的を達したときは、前項の規定にかかわらず、第16条の規定に準じて報酬金を受けることができます。
(4) 保全執行事件は、その執行が重大または複雑なときに限り、保全命令申立事件とは別に着手金及び報酬金を受けることができるものとし、その額については、次条第1項及び第2項の規定を準用します。
(5) 第1項の着手金及び第2項の報酬金並びに前項の着手金及び報酬金は、本案事件と併せて受任したときでも、本案事件の着手金及び報酬金とは別に受けることができます。
(6) 保全命令申立事件及び保全執行事件の着手金は、10万円を最低額とします。
第25条(民事執行事件等)
(1) 民事執行事件の着手金は、第16条の規定により算定された額の2分の1とします。
(2) 民事執行事件の報酬金は、第16条の規定により算定された額の4分の1とします。
(3) 民事執行事件の着手金及び報酬金は、本案事件に引き続き受任したときでも、本案事件の着手金及び報酬金とは別に受けることができます。ただし、着手金は第16条の規定により算定された額の3分の1とします。
(4) 執行停止事件の着手金は、第16条の規定により算定された額の2分の1とします。ただし、本案事件に引き続き受任するときは、同条の規定により算定された額の3分の1とします。
(5) 前項の事件が重大または複雑なときは、第16条の規定により算定された額の4分の1の報酬金を受けることができます。
(6) 民事執行事件及び執行停止事件の着手金は、5万円を最低額とします。
第26条(倒産整理事件)
(1) 破産、民事再生申立、会社整理、特別清算及び会社更生の各事件の着手金は、資本金、資産及び負債の額並びに関係人の数等事件の規模に応じて定め、それぞれ次の額とします。なお、各事件に関する保全事件の弁護士報酬は、この着手金に含まれるものとします。
① 事業者の自己破産事件 50万円以上
② 非事業者の自己破産事件 20万円以上
③ 自己破産以外の破産事件 50万円以上
④ 事業者の民事再生申立事件 100万円以上
⑤ 非事業者の民事再生申立事件 30万円以上
⑥ 会社整理事件 100万円以上
⑦ 特別清算事件 100万円以上
⑧ 会社更生事件 200万円以上
(2) 前項の各事件の報酬金は、第16条の規定を準用します。この場合の経済的利益の額は、配当額、配当資産、免除債権額、延払いによる利益及び企業継続による利益等を考慮して算定します。ただし、前項第1号及び第2号の事件は、依頼者が免責決定を受けたときに限り、報酬金を受けることができます。
第27条(任意整理事件)
(1) 前条第1項に該当しない債務整理事件(以下「任意整理事件」という。)の着手金は、資本金、資産及び負債の額並びに関係人の数等事件の規模に応じて定め、それぞれ次の額とします。
① 事業者の任意整理事件 50万円以上
② 非事業者の任意整理事件 20万円以上
(2) 前項の事件が清算により終了したときの報酬金は、債務の弁済に供すべき金員または代物弁済に供すべき資産の価額(以下「配当源資額」という。)を基準として、次の各号の表のとおり算定します。
① 弁護士が債権取立、資産売却等により集めた配当源資額につき
500万円以下の部分 | 15% |
500万円を超え1000万円以下の部分 | 10% |
1000万円を超え5000万円以下の部分 | 8% |
5000万円を超え1億円以下の部分 | 6% |
1億円を超える部分 | 5% |
② 依頼者及び依頼者に準ずる者から任意提供を受けた配当源資額につき
5000万円以下の部分 | 3% |
5000万円を超え1億円以下の部分 | 2% |
1億円を超える部分 | 1% |
(3) 第1項の事件が、債務の減免、履行期限の猶予または企業継続等により終了したときの報酬金は、前条第2項の規定を準用します。
(4) 第1項の事件の処理について、裁判上の手続を要したときは、前2項に定めるほか、本節の規定により算定された報酬金を受けることができます。
第28条(行政上の不服申立事件)
(1) 行政上の異議申立、審査請求、再審査請求その他の不服申立事件の着手金は、第16条の規定により算定された額の3分の2とし、報酬金は、同条の規定により算定された額の2分の1とします。ただし、審尋または口頭審理等を経たときは、同条の規定を準用します。
(2) 前項の着手金は、10万円を最低額とする。
第2節 刑事事件
第29条(刑事事件の着手金)
(1) 刑事事件の着手金は、次表のとおりとします。
刑事事件の内容 | 着手金 |
起訴前及び起訴後(第一審及び上訴審をいう。以下同じ)の事案簡明な事件 | 50万円以上 |
起訴前及び起訴後の前段以外の事件及び再審事件 | 100万円以上 |
再審請求事件 | 100万円以上 |
(2) 前項の事案簡明な事件とは、特段の事件の複雑さ、困難さまたは繁雑さが予想されず、委任事務処理に特段の労力または時間を要しないと見込まれる事件であって、起訴前については事実関係に争いがない情状事件、起訴後については公判終結までの公判開廷数が2ないし3開廷程度と見込まれる情状事件(上告事件を除く。)、上告審は事実関係に争いがない情状事件をいいます。
第30条(刑事事件の報酬金)
(1) 刑事事件の報酬金は、次表のとおりとします。
刑事事件の内容 | 結果 | 報酬金 | |
事案簡明な事件 | 起訴前 | 不起訴 | 30万円以上50万円以下 |
求略式命令 | 前段の額を超えない額 | ||
起訴後 | 刑の執行猶予 | 30万円以上50万円以下 | |
求刑された刑が軽減された場合 | 前段の額を超えない額 | ||
前段以外の刑事事件 | 起訴後 | 不起訴 | 50万円以上 |
求略式命令 | 50万円以上 | ||
起訴後 (再審事件を含み) |
無罪 | 60万円以上 | |
刑の執行猶予 | 50万円以上 | ||
求刑された刑が軽減された場合 | 軽減の程度による相当な額 | ||
検察官上訴が棄却された場合 | 50万円以上 | ||
再審請求事件 | 50万円以上 |
(2) 前項の事案簡明な事件とは、前条の事案簡明な事件と見込まれ、かつ結果において予想された委任事務処理量で結論を得た事件をいいます。
第31条(刑事事件につき同一弁護士が引き続き受任した場合等)
(1) 起訴前に受任した事件が起訴(求略式命令を除く。)され、引き続いて同一弁護士が起訴後の事件を受任するときは、第29条に定める着手金を受けることができます。ただし、事実簡明な事件については、起訴前の事件の着手金の2分の1とします。
(2) 刑事事件につき同一弁護士が引き続き上訴事件を受任するときは、第29条及び前条にかかわらず、着手金及び報酬金を適正妥当な範囲内で減額することができます。
(3) 弁護士は、追加して受任する事件が同種であることにより、追加件数の割合に比して一件あたりの執務量が軽減されるときは、追加受任する事件につき、着手金及び報酬金を適正妥当な範囲内で減額することができます。
第32条(検察官の上訴取り下げ等)
検察官の上訴の取り下げまたは免訴、公訴棄却、刑の免除、破棄差戻もしくは破棄移送の言い渡しがあったときの報酬金は、それまでに弁護人が費やした時間及び執務料を考慮した上、第30条の規定を準用して報酬金を受けることができます。
第33条(保釈等)
保釈、勾留の執行停止、抗告、即時抗告、準抗告、特別抗告または勾留理由開示等の申立事件の着手金及び報酬金は、依頼者との協議により、被疑事件または被告事件の着手金及び報酬金とは別に、相当な金額を受け取ることができます。
第34条(告訴、告発等)
告訴、告発、検察審査の申立、仮釈放・仮出獄または恩赦等の着手金は、1件につき10万円以上とし、報酬金は、依頼者との協議により受けることができます。
第3節 少年事件
第35条(少年事件の着手金及び報酬金)
(1) 少年事件(少年を被疑者とする捜査中の事件を含む。以下同じ)の着手金は、次表のとおりとします。
少年事件の内容 | 着手金 |
家庭裁判所送致前及び送致後 | 30万円以上50万円以下 |
抗告、再抗告及び保護処分の取り消し | 30万円以上50万円以下 |
(2) 少年事件の報酬金は、次表のとおりとします。
少年事件の結果 | 報酬金 |
非行事実なしに基づく審判不開始又は不処分 | 30万円以上 |
その他 | 30万円以上50万円以下 |
(3) 弁護士は、着手金及び報酬金の算定につき、家庭裁判所送致以前の受任か否か、非行事実の争いの有無、少年の環境調整に要する手数の繁簡、身柄付の観護措置の有無、試験観察の有無等を考慮するものとし、依頼者と協議のうえ、事件の重大性等により、前2項の額を適正妥当な範囲内で増減額することができます。
第36条(少年事件につき同一弁護士が引き続き受任した場合等)
(1) 家庭裁判所送致前に受任した少年事件は、第4条の規定にかかわらず、家庭裁判所に送致されても一件の事件とみなします。
(2) 少年事件につき、同一弁護士が引き続き抗告審等を受任するときは、前条にかかわらず、抗告審等の着手金及び報酬金を、適正妥当な範囲内で減額することができます。
(3) 弁護士は、追加して受任する事件が同種であることにより、追加件数の割合に比して一件あたりの執務量が軽減されるときは、追加受任する事件につき、着手金及び報酬金を適正妥当な範囲内で減額することができます。
(4) 少年事件が刑事処分相当として家庭裁判所から検察官に送致されたときの刑事事件の弁護士報酬は、本章第2節の規定によります。ただし、同一弁護士が引き続き刑事事件を受任するときの着手金は、その送致前の執務量を考慮して、受領済みの少年事件の着手金の額の範囲内で減額することができます。